日本のドラッグストア業界を代表する企業として、マツモトキヨシホールディングスは、その鮮やかな黄色と黒のロゴマークと共に多くの人々に親しまれています。現在では全国に広がる巨大なチェーンとなりましたが、その歴史は一人の男の熱意と、千葉県松戸市の小さな薬局から始まりました。
創業者は松本清氏。政治家としても活躍した彼は、1932年(昭和7年)に松戸市小金に「松本薬舗」を開業しました。これがマツモトキヨシのルーツです。当時は個人の薬局として、地域の人々の健康を支える存在でした。戦後、松本清氏は松戸市長に就任し、市の発展に尽力する傍ら、薬舗の経営も続けました。
同社が飛躍的に成長したのは、1950年代以降です。従来の薬局の枠を超え、医薬品だけでなく化粧品や日用品、食品なども扱う「ドラッグストア」という新しい業態を確立しました。この先見の明が、その後の日本の小売業界に大きな影響を与えます。1975年(昭和50年)には、当時としては画期的なディスカウント販売を開始。そして、視覚に強く訴えかける黄色い看板と黒い文字のロゴを導入し、都市部の駅前などに次々と出店する戦略を採りました。この戦略は功を奏し、マツモトキヨシの名は一気に全国に知れ渡ることとなります。
マツモトキヨシの強みは、単なる安売り店ではない点にあります。自社で企画・開発を行うプライベートブランド(PB)商品「matsukiyo」シリーズは、高品質でありながら手頃な価格を実現し、多くの消費者から支持を得ています。また、ポイントカード制度をいち早く導入するなど、顧客ロイヤルティを高めるための施策にも力を入れてきました。医薬品の専門性と、バラエティストアのような利便性を兼ね備えた独特の店舗スタイルは、他社との差別化を図る大きな武器となっています。
近年では、業界再編の波の中で、2021年10月に株式会社ココカラファインとの経営統合を果たし、共同持株会社「マツキヨココカラ&カンパニー」を設立しました。この統合により、売上高、店舗数ともに国内ドラッグストア業界のトップクラスの地位を確立。人々のウェルネス(心身の健康)とビューティー(美しさ)をトータルでサポートする企業グループとして、新たな成長戦略を推進しています。
創業の地・松戸市に根ざしながらも、常に時代の変化を捉え、革新を続けてきたマツモトキヨシ。その歴史は、日本の小売業の発展を象徴する物語であり、今もなお、消費者の生活に欠かせない存在として進化し続けています。

ここは、1932(昭和7)年に「松本薬舗」として開業したマツモトキヨシ創業の地です。トタン屋根の古い民家からスタートした松本薬舗は創業者のアイデアで多くの人が集まる店となりました。「親切なお店/良い品をより安く」をモットーにしたマツモトキヨシはじまりの場所です


松戸市小金44-5
JR常磐線北小金駅から徒歩3分