当日の戸定邸の全体の模様

Floral Whispers
蜜蝋でできたレコードです。
レコード針が蜜蝋でできたレコードを削っていくので今聞いている音は二度と再現できません。
そしていつか音が消える。
レコード自体もこの季節でなければ溶けてしまいます
スピーカーから囁くような音が聞こえます
蜜蝋(みつろう、Beeswax)とは、ミツバチが分泌する天然のワックスで、巣の材料として使われます。別名「蜂蝋(はちろう)」とも呼ばれ、蜂蜜のような甘い香りが特徴です。化粧品やキャンドル、ろうそく、革製品のメンテナンスなど、多様な用途で使われています。


気候変動や土壌汚染などにより、植物の減少と生態系の崩壊が世界各地で深刻化しています。古気候学では、花粉記録といった「自然のアーカイブ」を手がかりに、失われた植生を復元し、未来の気候変動を予測しています。
Anca BeneraとArnold Estefánは、砂漠化の危機にある地域から花粉を採集し、消えゆく植物の記録を残しています。これらのサンプルは将来の研究資料となる可能性を持つと同時に、ミツバチのような花粉媒介者が生態系維持に欠かせない存在であることを示しています。しかし、ミツバチの減少は地球規模での存続にかかわる深刻な脅威です。
歴史上初めて記録された音が蜜蝋の円筒に刻まれたという事実に着想を得て、アーティストたちはその象徴性を今日の環境危機と重ね合わせました。本作では、Pavel Brăilaと協働し、ミツバチの群れ(Apis mellifera)と共に、蜜蝋でできたレコードを制作しました。繊細で、再生できる回数が限られているこのレコードは、針を落とすたびに素材の「記憶」が削られ、やがて静寂へと消えゆきます。
Imagine Climate Dignity受賞作品
「とほく おもほゆ」KYOTO STEAM 国際アートコンペティション2022 制作作品
「とほく おもほゆ」のカラフルな棒状の先から呼吸しているように空気を吐き出しています



この展示は戸定邸の「使者の間」で行われました

地球規模でのCOVID-19パンデミックを受け、世界中の医療現場で人工呼吸器が足りない窮状を認識した石北直之医師(当時、国立病院機構新潟病院臨床研究部医療機器イノベーション研究室に所属)は、3Dプリンタで製造可能な人工呼吸器の設計データを無償公開しました。
同じ頃、2011年の東日本大震災以降、しゃぼん玉を吹くという行為を通して追悼を続けていたアーティストの三木麻郁は、自身の吐き出す息が脅威となった唐突な状況に、呼吸という生命の根源的な営みを捉え直す時であることを感じ取り、石北医師の協力を得て、本作の構想を実現させました。
タイトルは「遠くを自然と思わせる」という意味の古語に由来します。人工呼吸器に取り付けられた笛が、それぞれの存在を鳴らして遠くを思い、共鳴のコミュニティを広げていきます。
KYOTO STEAM 国際アートコンペティション2022 グランプリ受賞作品
※本作はアーティストと企業・研究機関が対話を重ねて制作する「KYOTO STEAM 国際アートコンペティション2022」の出品作品として、制作・発表されました。
「INVISIBLES:微生物たちの隠された世界」巡回展及びサテライト展示












在日スイス大使館・科学技術部の協力のもと、スイス国立研究拠点(NCCRマイクロバイオーム)とスイス・ローザンヌに所在するミュゼ・ド・ラ・マンが共同で企画した展覧会「INVISIBLES:微生物たちの隠された世界」が、巡回展およびサテライト展示としてご覧いただけます。
この展覧会では、私たちの生活と密接に関わる微生物という、魅力的でありながらあまり知られていない世界を紹介します。微生物は遍在しながらも目に見えず、コミュニティ(マイクロバイオーム)を形成し、健康や環境において極めて重要な役割を担っています。地球上の生命の起源である微生物は、あらゆる生態系の均衡を支える存在でもあります。土壌から海、空気から植物、そして人間の体内に至るまで――展覧会は、来場者をその隠された世界を探訪する旅へと誘います。

