土門拳(どもんけん)

土門拳

(墓所:21区1種3側4番)
土門拳(どもん けん、1909-1990)は、昭和を代表する世界的写真家であり、「報道写真の鬼」と呼ばれました。山形県酒田市に生まれ、日本の写真界に「リアリズム写真」という確固たる方向性を確立した最重要人物の一人です。

彼の写真哲学は、「カメラとモチーフの直結」を信条とし、「絶対非演出の絶対スナップ」という理念に集約されます。これは、被写体に一切手を加えずに、目の前にある現実をあるがままに、鋭い観察眼と卓越した技術で捉えようとする、厳格な姿勢を示しています。

土門の作品は大きく二つの柱に分けられます。一つは、社会の矛盾や人間の尊厳を深く追求したドキュメンタリー作品です。

戦後の日本において、彼は社会の現実から目を背けることなくレンズを向け続けました。特に、広島で原爆の悲劇を告発した写真集『ヒロシマ』(1958年)は、国際的にも大きな反響を呼びました。また、貧しい筑豊炭田地域で暮らす子どもたちの過酷な日常を記録した『筑豊のこどもたち』(1960年)は、当時の社会に衝撃を与え、報道写真家としての彼の評価を決定づけました。さらに、政治家や芸術家など、著名人の一瞬の「風貌」を捉えたポートレート作品群も、その人物の本質をえぐるような迫力で知られています。

もう一つの柱は、日本の伝統文化を主題とした作品群です。彼は古寺を巡り、仏像や古建築が持つ「日本の美と心」を写し出すことに情熱を傾けました。この活動は彼の終生のライフワークとなり、1963年から足掛け12年をかけて刊行された大作写真集『古寺巡礼』(全五集)として結実しました。特に、女性の篤い信仰を集めた室生寺の仏像と伽藍を写した作品群は、その代表的な成果として知られています。

1983年、故郷の山形県酒田市には、彼の全作品を収蔵する日本初の写真専門美術館「土門拳記念館」が開館し、その写真芸術は現在も多くの人々に感動と影響を与え続けています。

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土門拳
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